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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


「失敗は成功のもと。もうちょっとだけ、ナツがんばれ。今のナツは……頭の中が不安だらけ。もっと信じて? あたし達も、……自分も」

「うん……」


 ナツが両手で抱きしめてきた。


「信じる。しーちゃんもサクラも……、僕のモノも」


 一部に限定してしまっているけれど。


 早漏克服の合宿は厳しいらしい。

 そしてナツは……いい結果を残せていないらしい。


 そこから来る焦慮感、不安感。

 自分だけが同じ事を出来ないという、孤独感、そして寂寥感、疎外感。


 なまじ、なんでも出来る器用な人間であるがゆえに。

 だから心に負荷がかかるような挫折感を味わえば、パニックのような状態になり、ブラックリストに載るようなことをしでかしてしまうのだろう。


 きっと、まだ心が未熟なんだ。


 だがそれを言うならばあたしだって同じ。

 外見に、実年齢に……精神が追いつかない。

 取り残されたことが、寂しくてたまらなくなる。


 だけど、きっとそれは誰もが同じ――。


 誰も完璧な人間などいない。

 誰もひとりだけでは生きられない。


 己の未熟な部分を補えるのは、きっと鏡となりえる他者のはずで。

 互いの欠けた部分を補って、人間社会は構築されていく――。


 この健気な美しい王子が、どこか歪となって欠けたものがあるのなら、あたしは彼を真綿にくるむようにして、優しく教えてあげよう。励ましてあげよう。


 きっとそれは、あたしの役目だと思うから。


 ……ナツならきっとわかってくれる。

 きっと前を向いて歩いてくれる。



「僕……また頑張ってみる」

「そうそう、頑張れ」


 あたしは嬉しくなって微笑んだ。



「……僕、頑張る。だからごめんね、しーちゃん。苛々してかっとなっちゃって。大学の校舎で反省していたはずなのに、どうしても……頭の中が悪いことしか考えられなくて。だからごめんなさい」


 ナツは素直に頭を下げた。


 そして――。



「それと……」



 くるりと後ろを向いて、はにかんだように笑った。



「サクラ」



 そこには、堅い表情をして佇むモモちゃんが立っていたんだ。

 
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