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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

 
 ……妙な緊張感に、見ているあたしの方がドキドキする。

 
 やましいことはなにもない。

 モモちゃんとのハジメテは嘘八百。

 
 あとあったのは――。


 ………。


 そうだ、あれもあった。
 
 だが、"たかが"3度の事故ちゅ~、だ。


 モモちゃん、まさかそれをぶり返すつもり?

 内緒の笑い話にしたはずだよね? 事故だからと。


 他になにかあったろうか。

 モモちゃんがやけに真剣な顔でなにかを訴えたそうにしているから、あたしも記憶力が乏しい脳みそをフル回転させる。


 ああ、あれもあった。

 "ご挨拶"。


 初恋の綺麗なお姉さんにちょっと発情して目覚めた息子さんとご挨拶して、そしてあたしの娘さん(?)に軽くご挨拶されたりして。ああ、娘さんはモモちゃんのご挨拶に気づいていなかったくらい、ささやかなものだったらしいけれど。


 そんな家族ぐるみのお付き合いにて、今までの険悪で最悪な雰囲気を改善し、あのやけに大人ぶった上から目線の…嫌味ったらしいモモちゃんの"殻"を打ち破るべく、そして共に大事なナツを守る戦友として、信頼関係を築き上げてきただけなのに。

 微笑ましいタッグを組んで、決勝戦まで進んできただけなのに。


 そう、あたしにとっては"だけなのに"――。


 モモちゃんは違うのだろうか。

 見過ごせないほどに、重々しかったのだろうか。


 本当にナツのことを大切に思えばこそ、そこまで隠し事のない潔癖な関係を作りたいのだろうか。


 それはわかる。

 その気持ちはよくわかる。


 だけど――。

 あたしだってナツは大切だ。

 
 大切だからこそ、言わない言葉もあっていいんじゃない?

 結果が"なにも進展していない"で変わらないのであれば、わざわざその過程になにがあったのかを言ったところでなんだと言うの?

 
 それを聞かされるはナツは、嬉しい?

 ありのままを告白するのは勇気も潔さもいる。だけどそうした姿勢を見せてする告白は、所詮はあたし達にとって免罪符のようなもので、ただナツに隠し事をしているという罪悪感から逃れたいだけにする、自分勝手なものではないの?
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