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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
ナツを思えばこそ、言わなくてもいい事実もあっていいと思う。
すべてがすべて、胸の内を告白するだけが親友ではないと思う。
ナツは、すべてを告白されなければ関係を築いていけないような、そんなに度量の狭い男ではない。そしてモモちゃんだってそうでしょう?
幾ら情報通だとはいえ、互いを尊重するからこそ踏み込んではならない"聖域"だってあるはずで。
ねぇ、モモちゃん――。
だからモモちゃんは、あたしがハル兄やナツと一緒にいる時は、黙って遠ざかっていたんじゃないの?
あたし達だけにしかない時間を持たせようとして。
そんな優しいモモちゃんだから。
たとえモモちゃんが正論かざしていて、あたしが無責任すぎるのだとしても、あたしはモモちゃんだけに責任は押しつけない。
モモちゃんがあたしとの間で起きてしまった偶発的な事象を、すべて故意的なものとして自らの責任のうちにナツに告白するというのなら。
あたしは、被害者のふりして黙って見てなんていられない。
連帯責任じゃないか。
今まで一緒に頑張ってきた仲間じゃないか。
ひとりだけ格好はつけさせない。
あたしはそこまで無責任で無慈悲な女ではない。
シズルさんだって、やるときはやるんだ。
「ナツ、実はあのね……」
ふたりの間に、あたしは割った。
「待て、ここは俺から」
するとナツとあたしの間を、さらにモモちゃんが割る。
「いいの、あんたは黙ってて。ここはあたしが」
その間を再びあたしが――。
「いや俺が」
さらにその間をモモちゃんが――。
「いやいやあたしが……」
やばいよ、割り込む隙間がなくなってしまった。
"壁"を見上げれば――。
「……ねぇ?」
ナツの顔が、強ばった笑みを作っていた。
「実はふたり、しちゃった……とか言うオチ?」
底冷えしそうな、冷たく低い声。
ナツの目が暗澹たる闇色に染まった。