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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 怖っ!!!


 ビュオオオオオ。


 絶対零度の冷たさを誇る吹雪が部屋に渦巻いたようで。


 "しちゃった"……確かにしちゃった事故ちゅ~。


「いや、ナツ。決してお前の言う"しちゃった"ではないんだ!!」

「事故だったのよ、"しちゃった"のは!!」


 ここ一番――。

 意見を合わせないといけないはずなのに、まるで食い違ってしまったモモちゃんとの主張。


「はああああ!? してないだろう!? ここでまぎらわしいこと言うなよ、あんたは!!」

「ええええ!? その"しちゃった"じゃないの!?」


「しーちゃん、どの"しちゃった"なの、それ?」


 にっこり。

 凄まじく荒れ狂う吹雪を撒き散らしながら、王子様スマイル。


 妙に穏やかな物言いが、確実にあたしの命を縮めていく。


「し、しーちゃんは淫魔です。淫魔は目覚めたばかりなので、取り扱いを気をつけて……」

「どんな"しちゃった"? セックスのイロハA~Zまでだったら、どの程度? 怒らないから言ってみて?」


 ……淫魔の主張などまるで通らなかった。


 セックスのイロハA~Zってなに?

 あたしはABCしか知りません!!
 
 眠っていた12年間でなにが追加されたんですか?


 事故ちゅ~ならどこですか?

 Aに満たないキスはどう言えばいいんですか?

 ……いや、結果的には満ちているか、AはAだ。


「言って」


 ナツから笑顔が消え、あたしは反射的に答えた。


 事故ちゅ~3回ならば。




「AAA(トリプルA)」




「馬鹿かっ!! なんでAの強度をあげたんだよ、あんたは!!」


 モモちゃんが焦って怒鳴る。


「い、いや……3回だからAが……」



「さん……かい?」


 ビュォォォォォ。


「一回ならまだしも……三回? 同じ失敗を何度も繰り返すしーちゃんならまだしも、常識派で頭脳派のサクラまで三回も?」


 微妙に差別されている気はするが、この際無視だ。


「事故だったの」

「そう事故だったんだよ、人災!!」


 あたしとモモちゃんは並んで、ナツに叫んだ。


「……僕が頑張っている間に、三回……。三回もサクラはしーちゃんと幸せ気分を……」


 ビュォォォォォ。
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