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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
ずる……。
モモちゃんのメガネが外れて、床に落ちて壊れる前に、あたしは咄嗟に両手でそれを受け止めた。
「メガネが……」
そんなこと、今この状況ではどうでもいいことだろうに、そんな言葉しか口から出て来ないあたしのボキャブラリーの貧困さ。
悔いながらも、より間近に見てしまったふたりの……美少年のキス場面。
……ごくりと、思わず唾を飲み込んだ。
美しい顔を傾かせたナツ――。
伏せ目がちな目を縁取る長い睫毛がふるふる震えている。
……初めてナツのキス顔を客観的に見るけれど、夢の王子様の顔は妖艶さを纏って神々しいほどに美しく。
驚愕を越えて嫉妬や独占欲を感じるというよりは、とにかくナツの顔が綺麗すぎて見惚れた。
対するモモちゃんは――。
メガネの奥に隠していた神秘的な切れ長の目を、開くにいいだけ開き、睫毛どころか全身総毛立って身体自体をふるふる震わせていて。
……初めてキスに拒絶反応を寄越すモモちゃんを見たが、いかに卑猥兄弟に仕える忠実なアイアンバトラーでも、いくら親友相手とはいえど、これだけ大仰な反応を寄越すほどのインパクトはあるらしい。
少なくとも、あたしの加虐心をそそるくらいには。
あたしが奪った納豆まみれの初ちゅーと、どちらが彼にとっては悍(おぞま)しいのだろうか。
両者両極端の反応ながらも、基本形は妖しい艶気がちらちら混ざるイケメンで、その上公然としている唯一の親友同士で。
男同士のキス……。
麗しの美少年同士の……。
互いにひとりしかいない親友同士の……。
カチャリ……。
ただぽけっと見ているあたしの中で、禁断の扉が開いた。