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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 "そんな"趣味はないあたしとはいえども、この親友ふたりがタッグを組んだ"腐れた"演出効果は強烈だ。

 どっちが"攻"でどっちが"受"か、本気で悩んでしまう。


 やはりここは、経験豊富なナツが"攻"か?

 "ふふふ、サクラ……。お前はここが感じるの?"


 妖艶な意地悪ナツに翻弄され、感じて喘ぐ真っ赤なモモちゃん……。



 それとも、持ち前のS発動してモモちゃんがナツを攻めるか?
 
 "ナツ……。俺に懇願してみろ。どうされたいんだ?"


 超然と笑うモモちゃんに虐められ、上気した肌で儚げに喘ぐナツ……。


 どちらも捨てがたい。


 今この場面では、ナツが「こんな女より僕に振り向いて」と、耐えきれず愛の告白めいたキス……の方がしっくりくるか。

 秘められたナツの恋。そして自覚始めるモモちゃんの恋。


 リアルびーえる。


 写メ……。

 ああ、写メとりたい。


 だけどあたしのスマホは更衣室だ。


 仕方が無い、記憶にきっちり刻みつけて、後でハル兄にも報告だ。

 あたしが見た"ハジメテ"の男同士のキスなんだから。


 凄く時間が長く感じるが、ナツ……舌も入れているのだろうか。

 ……さらに近くでガン見したけれど、残念ながらディープではなかったようだ。

 ナツが離した唇からは、淫らな銀の糸は現われなかった。


「ちっ」


 少し残念で思わずしてしまった舌打ちに、少しとろりとした悩ましいナツの流し目があたしに寄越される。


「しーちゃん……」


 ナツ特有の、囁くような甘い声が放たれたかと思うと、


「!!!!?」


 今度はそのまま、あたしにキスをしてきたのだった。


 無節操なキス魔に豹変したナツ。

 あの綺麗なお顔が今度ははあたしの目の前に。


「ん……」


 漏れた声が、発情始めたようにとてもいやらしい。



 だけど――。

 
 唇を合わせていればわかる。

 震撼するナツの唇が冷たいことを。
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