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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
キスをしながら、後頭部をイイ子イイ子となで続けた。
柔らかな髪が素直に指先を通し、擽ってくる感触が気持ちがいい。
その髪の感触のままに、あたしのキスにも反応して……その悲しみの海からこちらに出て来て欲しい。あたしの手をとって欲しい。
「ナツ……んふ……ぅっ、ん、んん……っ」
「……ん……っ」
やがて――。
へたくそながら執拗に動くあたしの舌の動きに観念したのか、ナツは甘い声を漏らすと、おずおずと反応して舌を動かし始めた。
あれだけあたしを翻弄する舌技を持つくせに、そのぎこちなさはまるで初めてのようで。あたしよりもへたくそにも思えるようなもので。
少しずつ少しずつ……。
幼稚園児の並みの歩調で、不安さを抱えながらもあたしのいる場所にまで出て来ようとしてくれたナツ。
昔昔のあの嵐の日。
家族に置いてきぼりにされたナツは、びしょ濡れで凄い有様のあたしに驚いて恐怖に引き攣った顔をしながらも、自閉気味の心を少しずつ解放してくれた。少しずつ心を開いてくれた。
12年経っても、ナツは変わらない――。
それが可愛くて、それが嬉しくて。
……少しだけ、笑みが零れた。
よちよち歩きでいい。
無理に背伸びする必要なんかない。
ただ、あたしの場所は安全なのだと信じてくれればいいだけだ。
昔も今も――。
「ん……くふぅ……」
「ん……っ、しーちゃ……っ」
ぬめったナツの舌先が、もぞもぞ動かしていたあたしの舌を絡み取り、完全に愛撫の動きにてリードを始めた。
「――っ!!!?」
「しーちゃん……好き……」
くちゅくちゅという唾液の音の合間に聞こえたのは、熱に浮かされたような吐息混じりの愛の言葉。
「好きだよ……?」
向けられたのは、とろりとした目。
胸が切なくなるほど真摯な目。
美しいナツの顔が苦しげに歪んだ……と思った途端、ナツはあたしの頭を両手で掴み、その顔をより斜めに傾かせた。
より深く舌を絡め合わせようと、ナツの舌の動きが活発に……そして淫らに動き始め、形勢は逆転される――。