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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「ああ、ああ……っ、イ……」



 左右に開いたままのあたしの足の指先に力が入り、ピンと伸びる。


 ああ、なにか迫り上がってくる。



「あぁぁ、あああ……っ」




 その時だ。



「だぁめ」


 意地悪げに笑うナツは、あたしの身体から……一切の身体の部位を離したんだ。無論、手と口も。


「ナ、ナツ……?」


 突如失われた熱の奔流。

 身体に残るのはもどかしい残火だけだ。


 熱にも火にも形になれずに、身体にただ走って勢いを無くすだけの快感の余韻は、ただの甘い拷問にしかすぎず。


 もう少し、もう少しだったのに――。


 泣きたいのを堪えながらも、それを妙なプライドが邪魔して口に出来ないあたしは、ただ「うぅうぅ」唸るようにして、ぽかぽかナツの胸を叩いて、不満を訴えた。


 しかしナツは笑うだけ。


「僕がしーちゃんの温もりを求めて、恋しくてたまらなかったように、しーちゃんも僕を恋しくなって? 僕にどこをどう愛されたいのか、想像してあとで僕に教えて? 僕が頑張っている間に、イイ子で待っててくれたら……」


 ナツはあたしの耳もとで囁く。



「お望み通り、気を失うくらい気持ちよくしてあげる」


 ぞくり。


「何度も何度も、しーちゃんを愛してあげる。イキたかったのにイケなかった分、僕は何度もしーちゃんをイカせてあげるから」



 甘すぎる声音だけで、甘い快感が全身に広がってぞくぞくする。



「だからね、今は……その時がくるのを想像して我慢して? しーちゃんも頑張っていると思ったら、しーちゃんも僕に抱かれたいと思ってくれてると思ったら、僕……今まで以上にもっと頑張れる」

「……っ」


「しーちゃんのイクところ、僕……下のお口に挿れながら見たいんだ」


 儚げに笑うナツの方こそ、あたしよりも苦しそうに見えた。


「一緒に、イキたい。大好きなしーちゃんと……」


 ナツは、あたしの唇に軽くキスを落とした。


 その時、控えめなノックの音がして、ふたりでびくっとしてしまう。



「……悪いが、あと2分だ」


 小さな小さな……モモちゃんの声。


 彼は、聞いていたのだろうか。

 はしたなく喘ぐあたしと、こんなに切なく愛を訴えるナツを。

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