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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「サクラはよく僕に言っていたね。"他にも女は沢山いるだろう?" それを今お前に返すよ。サクラ、他にも沢山女はいるだろう?」


 柔らかく笑うナツ。

 強ばった顔で俯いたモモちゃんは、やがて意を決したように顔を上げた。



「……"それでも、彼女がいい"」


 その返答に、ナツは哀しそうに微笑んで目を伏せ、そして再びモモちゃに視線を合わせた時には、ナツは真面目な顔をしていた。

 モモちゃんも、真剣な顔を返していて――。



「ナツ。ようやく、彼女が"救い"と言ったお前の言葉の意味がわかった」

「……うふふふ。だったら、どう? 気分は……」


「苦しいが、気分はいい」



 正反対のことを口にするモモちゃんは、爽やかで極上の笑みを浮かべ……、なぜかあたしを見る。そしてナツもなぜかあたしを見る。



「ふふふ、これがお前が知りたがっていた愛の逆説って奴だ。理屈では説明出来ない不可解な感情が溢れて、ああ自分は生きているってわかるだろう?」

「ああ」


 ふたりともとてもいい顔で。


「モノクロの世界に、色のついた光が差し込んだだろう?」

「ああ」


 イケメンがさらに輝かしいイケメンで。


 ぴかー。

 ぴかー。


 あたしの頭の中で、ネオンが点滅している。



「少し天然入って、可愛いだろう?」

「ああ」



 ああ、文字を作っている。



「危なっかしくって、どうしても目が離せないだろう?」

「ああ」




 り・あ・る・びー・え・る。



 それが眩しすぎて、あたしはふたりの話は耳に届いていなかった。

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