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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

 恐れ多くもブランドのイメージを担うモデルのナツ(人形)の肩に、背伸びをして手を置くと、キメ角度なのか右斜め45度に顔を向けて、変なメガネをとったのだ。


「――っ!!!?」


 そこに見えたのは、まるで少女漫画のようなキラキラおめめ。

 睫毛がばっさばさで、しかもカラコン……つけている気がする。


 の○太くんの3の字おめめよりも、これはインパクトがありすぎる。


 くらり。


「おい、大丈夫か?」


 モモちゃんがあたしを支えてくれたけれど、そこに聞こえてくるのはメタボ司会者の、ちっちっちっちっという小さな舌打ちの音。


 キラキラおめめと目が合ってしまったら、司会者が小声で言った。



「惚れるなよ?」



 ……殴りたい。

 殴ってもいいですか!?



「おい、暴れるな!! 凶暴化するなっ!!」


 モモちゃんが必死にあたしを取り押さえた時、聞こえて来たBGMは……。


「リカード・ボサノヴァ……」


 そう、佐伯家でハル兄がサックスで吹いてくれた、あのメロディアスなジャズ。


 ああ、やだ……。

 やだ、やだ、やだ。


 この曲はあたしには思い出が深すぎるんだ。

 誰よ、この曲を選んだひとは。


 すぐさま、じんわりときちゃうじゃないか。



「おおっと……、ここで時間だNE~」



 メタボ司会者は、すちゃりとあの変なメガネを装着すると、手招きながら跳ねるゆ~ちゃんと、アダルトナツがいる壇上に行ってマイクを手に取ると、あたし達を含め決勝戦出場者を集っているようだ。このまま決勝戦にすぐに入りたいらしい。


 あんたがおかしな素顔を見せたせいで時間が凍ってしまい、時間は押してないから、大丈夫だから。

 ちょっとの間、あたしを忘れてひとりにしておいて。

 このじんわりが、溢れ出て止らないことを、誰にも気づかれたくない。


 切なげな曲が流れる最中あたしはひとり蹲り、放って置いてオーラを出し続けていた。


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