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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

「……どうした?」


 動けずにいるあたしに、モモちゃんが心配そうに声をかけてくる。


「……言えない」

「言ってみろ。なんでそんなに泣いてるんだよ」


 蹲るあたしの顔を、身を屈んで覗き込むモモちゃん。

 斜めに傾けられた顔から、さらさらとした漆黒の髪が零れる。



「俺は、あんたの面倒をみるとナツと約束した。俺をナツとでもいい、波瑠さんとでも思っていいから、言ってみろ。……俺を頼れ」


 うう……っ。

 優しいモモちゃんの声が、この曲とセッションを始める。



「今だけでいいから。大義名分的に"代理"でいられる今は……俺を頼ってくれ。俺に……素直に甘えて、その心を見せてくれ」


 哀しげな目。切なげな光。


「どうした? なにが辛い?」


――どうした、シズ?

――なにがあったの、しーちゃん。



 ……言うしかないじゃないか。


 モモちゃんの影に、ナツもハル兄もちらついて見えるのなら。

 素直になるしかないじゃないか。


「あたし……ね? あたし……この曲をかけられた時から――」

「ん……?」



 あたしは言ったんだ。



「また濡れちゃったの……」



 ハル兄のあのサックスを吹く姿を思い出して、体が疼いてたまらない。

 秘部に感じた熱いじんわりが、きっと溢れんばかりの洪水状態になっている。今歩いたら、零れちゃうよ……。


 この曲は危険すぎる。この曲のせいで、お風呂場の痴態をハル兄に見つかって、ずっとずっと脅される羽目になってるくらいなんだ。

 その上に、されたばかりのナツのおイタの感触が蘇り――。

 興奮が止らなくて。


「どうしよう……凄いことになっていて……。せっかく鼻セレブで"拭いた"のに……あとからあとから……」



「知るかっ!!」




 ……あたしは、真っ赤になってぷりぷりしたモモちゃんに放置された。

 
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