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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
彼がなにを望んでいるのか、あたしはそれを知っているはずなのに、ナツを悲しませたくないという一念で、あたしはそれに気づかぬふりをする。
そしてモモちゃんは、ナツだけではなくあたしをも悲しませ困らせたくないと、吐き出した真情を冗談にしようとする。
誰かを悲しませないようにするために、誰かが傷ついていく。
誰もが幸せになって大団円を迎えるなんて、本当に奇跡のような僅かな確率だ。現実はそんなにうまくいきっこないのかもしれない。
誰かの幸せの影で、誰かがむせびなく。
誰かを泣かせないためには、誰かの幸せを諦めるしかない。
負の連鎖を断ち切るために必要なのは、誰かの犠牲なんだ――。
……なんて。
あたしが、そんな不条理な社会システムを許容するはずはないでしょう?
モモちゃんをこのままにしておくものか。
ひとは不完全。完璧なひとなどいない。
ネガティブに流されれば不幸な未来に向かって弱くなり、ポジティブに流れれば幸福な未来に向かって強くなれる……ただそれだけのこと。
自分の意志ひとつで幸にも不幸にもなる、そんな未知数の"単純馬鹿"こそが、愛すべき人間。情けなくて頼りないのがあたし達の本性だと思うから。
だったら――。
――もし、幸せを夢見ることが許されるのなら……。
"もしも"なんて仮定の前条件つけずに、誰もが幸せになれると、堂々と夢見てもいいでしょう?
許されないひとなんているわけはない。
そして幸せとは、誰かに許されて初めて感じ取れるのだとあたしは思う。
ひとりで感じる幸せなんて、所詮はただの自己満足。
ナツを想うモモちゃんが、ナツと仲直りしたモモちゃんが。それでも苦しいと悔しいと訴えつつ、まだこんなに罪悪感に満ちた苦渋の表情をして、助けを求めているのなら。許しを求めているのなら。
それができるのは、この場にいるあたししかいない。