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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
「こんにちは、いらっしゃいますか~っ。小学生の時から腐れものが大好きな、だけど体も心もピュアピュアなモモ……」
「ひとを腐れ好きみたいに言うな!!」
あ、やっとお部屋から出て来た。
だからあたしは両手を振って、にっこり。
「こんにちは~。初恋の綺麗なお姉さんの突撃レポートです~」
「茶化すのはよせよっ」
ぶぅたれたモモちゃん、なんだか可愛い。
「あら、冗談は茶化すためにあるんじゃないの? それを気に入らないというのは、本当は茶化されたくないんでしょう?」
「く……」
「押さえ込むから苦しいだけ。初恋貫くのは、誰がいけないとモモちゃんを責めてるの? あたし? ナツ? ハル兄? 世間一般の皆様?」
「……っ」
「モモちゃんとあたしは禁断な関係でもないし、この世にはもっともっと苦しんでいるひとがたくさん。なのにモモちゃんは、どうしてそんなに世界が終わったような顔をするの?」
「だけど……、だけど俺は!! ナツの心を知りながら俺は!! 気づくとまたナツを裏切ろうとして……」
モモちゃんが潤んだ目で睨み付けてくる。
「すごい……自己嫌悪で」
引き籠ろうとした原因は、ナツへの新たな罪悪感が芽生えたのも理由にあったらしい。ああ、これではトカゲの尻尾切りだ。
だけどあたしはわかるもの。
モモちゃんはあたし以上にナツを大切にしていることを。
そしてその為に苦悩するだろうこと、ナツが知らないわけはない。
ナツにとっても、モモちゃんは唯一無二の親友なんだから。
あのタイミングでのナツの出現は無意味じゃない。
それはモモちゃんを牽制するためというより、モモちゃんの心を救うために現われたのだと、非難覚悟で自惚れたあたしが言っていいのなら――。
「だ~か~ら~。今まであっちのお部屋でなにをナツとお話していたの? ナツがあんたを警戒しているのなら、ふたりにさせないって。ほら、こうしてあたしとモモちゃんが深刻に話していても、こうやって手を振ると、喜んでナツは手を振ってくれてる。ほらモモちゃんも」
サングラスとフードの怪しい人物は、ひょこひょこ飛び跳ねながら手を振ってくれた。幻の尻尾までぶんぶんと振られている気がする。