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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
そんな中、採点が始まっていたようで。
「……HI! 矢印出そろったNE。もういいNE? 採点~。野○の会の皆さん、プリーズKACHIKACHI~」
何十人もの人達が矢印を数えるカチカチ音が響き渡る。
……この矢印数えるのに、そこまで数える人数が必要なんだろうか? そこまで正確性が必要なんだろうか。
ざっと見た感じは、観衆の評価は上向き矢印が多い。観客はこのカップルを"ラブラブカップル"とみなしたのか。「おかめ」もどきの艶技力はそこまですごかったのか。
"どうだろうね"、"ドキドキするね~"とでも言っていそうな、一見どこにでもいそうな平凡大学生風カップル。その正体は……。
ん? おや……? おかめが手にしているの……。
「あれ、DVD……?」
どこからどうやって手に出来たのか。
わからないけれど、ちゃっかりと彼女が持つ、黒い怪しいパッケージの金色文字は、ここからでもよく見える。
『閉鎖病棟 鬼畜医師に淫魔を移植された少女!!
話題の素人「岡本かめ子」、新 作!!!』
………。
涙ぐましい営業活動。話題になっている時点でもう素人じゃないと思うけれど、素人しかウリに出来ないらしい彼女は、間違いなくプロ「おかめ」で、何作目かの作品を地道に宣伝しているのだろう。ここでの巡業で、少しでも売り上げがあがるといいね。うん。
だけど――。
"鬼畜医師に淫魔を移植された少女!!"
あたしの淫魔、ピュアピュアだよね?
――シズっ!!
鬼畜医師に移植されてないよね……?
ハル兄なら、クマが川で鮭を取るように、淫魔を片手でがっと捕獲しそうなワイルドさがあるから…。
「あるわけないだろうが。まずは淫魔ってそんな"生き物"か!? あんたは、眠っていた12年間を知らなすぎる」
毅然と言い切るモモちゃん。
「ナツも波瑠さんも、12年間あんたを護り、目覚めさせようとしてきた。疑うなんて波瑠さんに失礼だぞ? ナツは毎日どんな天候の時も病室のあんたを見舞い、波瑠さんは担当医となってあんたの体を研究して連日徹夜してたんだぞ? それが12年。あのふたりの顔色や表情は、あんたが目覚めてから随分とよくなった。笑うようになったしな」
ハル兄……。ナツ……。