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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
よりダークへと覚醒始めたモモちゃんの未来を悲嘆して、いやいやその前に、身近な"現実"での危機感にぶるりと身震いしたあたしに、実にほのぼのと聞こえて来たのは、年寄カップルの声。
腰の曲がった、シワシワお爺さんとお婆さん。御年推定80歳。
そう、争奪戦では先頭を走り、淫らな玩具は既に体験済み、さらには今あたしが着ているこの赤いビキニの着用を本気で考えているような…そんなあたしが思い描く年寄らしからぬ、内面自称"若人"。
「え~。きっと皆さんは、儂らのラブラブ閨体験記など聞きたくはないと思いますので……」
お爺さんがマイクを使って、時折入れ歯をかぽかぽ慣らして喋る。
口の大きさにあっていないのか、外れるのだろう。
そう言えば、避妊具の争奪戦でも入れ歯が外れてたっけ。
「まずは、出会いから語りたいと。出会いは、16歳。あれは戦後の……」
閨体験記以上に聞きたくない、おふたりの馴れそめ話。
その頃からラブラブだったと言いたいのか、ラブラブに至るまでの前座が必要なのか。
きっとこういうのは野次が飛ぶと思いきや、意外にも皆聞いている。
なぜか、皆涙している。
なぜ、なぜ、なぜ!?
「……そして。二度と会えないと思うとったこの"桃子"と再会出来たのじゃ…。わしゃぁ……神様というもんは本当にいるんじゃと、涙した……」
………。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「……言いたいことがあるなら言えよ。さっきからちらちらこっち見るな」
「ねぇ、モモコ……」
「黙れ!!」
ぐすん、言いたいこと言ったら怒られた。