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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
「ああ、静夫さん……」
「桃子……っ」
抱き合うお爺さんは、静夫。お婆さんは、桃子と言う名前らしい。
「………」
「………」
「………」
「………」
「……言いたいことがあるなら言いなさいよ。あるんでしょ、言いたいこと」
「……シズオ」
「お黙り!! お姉さんはれっきとした女よ!?」
モモとシズ。
性別こそ違えど、パクるなと言いたいけれど、年齢的にどう見ても、あたし達の方がパクリだ。
「そこで思ったのじゃ。シズオとモモコは、結ばれるべき運命じゃったと」
ぐすぐすと鼻を啜る音が聞こえてくる。
だが悪いが、あたしにはどうしても感情移入できない。
同じ名前だと知ったらさらに、共感する前に壁が大きくなった。
きっとモモちゃんも同じだろう。
「運命か。染みいるな……」
ところが。
アイアンハートを持つダークチェリーは、わかりえるらしい。
「か、感動もの?」
「ああ。運命っていいよな。それだけで、世間のどんなしがらみをも無効にできる」
見下ろされるのは切ない目。
「その名のもとに、どんな罪も許される。たとえそれが、絶対に許されざる略奪であろうと」
ゆらゆらと揺れるのは、瞳の奥にあるなにかの炎。
「あんたの……運命は、誰だ?」
どくん。
"運命"……。
かつて、佐伯ママがナツのことをそう言った。
そのことは、ハル兄もわかっていることだと。
それでもハル兄が動く決心をしたのなら、心の覚悟をしていろと。
ハル兄はあたしに告げている。
覚悟しろ、と。
運命……。
ぐらぐら揺れるあたしのハル兄の心が、運命という名のもとに、ナツの色に染まるんだろうか。