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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「……。あんたは、こういう時でも、俺を思い浮かべはしないんだな」
落とされたのは、モモちゃんの悔しげな声。
「ここには、ナツも波瑠さんもいないのに。俺しかいないのに。俺に惑いかかっているくせに、それでも運命の相手に、俺はなりえないのか」
モモちゃんの手が、あたしの頬に添えられる。
熱いのは、モモちゃんの瞳なのか、それとも添えられた手なのか。
「ほんの少しでも、俺を相手に思えないのか」
ぎゅっとモモちゃんの目が細められた。
その時だ。
突き刺すような鋭い視線を感じて、あたしもモモちゃんもその方を見た。
それは、アダルトナツからだった――。
微笑んではいるものの、明らかに敵意を向けていたんだ。
……モモちゃんに。
誰のどんな努力をも無効にしてしまうのが運命だというのなら、モモちゃんの熱を弾いて、警戒心なくあたしの心に入ろうとするアダルトナツの存在はなんと呼べばいいのだろう
あたしの体を視線で蕩けさせる彼は、なんだというのだろう。
「あんな男に、意識するなよ」
モモちゃんは、ためらいがちに……、アダルトナツからの視線を遮るようにあたしを抱きしめた。
「あんな男にするくらいなら……俺にしとけよ」
ぎゅっとその力が込められる。
「俺を意識しろよ」
ざわめきが聞こえた。
「俺を……意識してくれよ、なぁ……静」
『シズさん、シズさんっ、それは~っ』
モモちゃんがあたしの名前を呼んだ時、大きな音量で鳴り響いて上書きしたのは、別の"シズ"の名で。モモちゃんの舌打ちの声すら掻き消したのは、やけに若々しく艶めいた声を出す"桃子"だった。
え、お話……は、終わったらしく、今は……?
ベッドに布団を被って、もぞもぞ動いているのがそうなのか。
そこから聞こえる嬌声を、マイクが拾っているらしい。
『シズさん……っ、ああ、いい、シズさんっ』
声だけ聞いていれば、間違いなく若い少女だ。
というより、本気でシテいるの!?
『はっ、はっ……。モモ、可愛いよ、モモ……っ』
そしてお爺さんの声も、やけに悩ましく色っぽいのだ。
あれなら絶対騙される。80歳同士の声には聞こえない。
吐息混じりの睦み合い。
聞こえてくるのは、モモとシズ。

