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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美


「………」

「………」


「……意識しすぎ」

「……意識しろといったのは、モモちゃんじゃない」


 そんなつもりはなかったのに、おかめ以上のこの臨場感溢れる声にドキドキさせられるのは、嬌声が空々しく聞こえないからだ。相手に身も心も任せきっている女が出す喘ぎは、年齢に関係ないフェロモンを拡げている。


 やばい。

 これはすごい。


 円熟しすぎている80歳カップル、侮れない。

 姿が見えないだけに、淫らな妄想力を掻き立てる。


 妄想上でなら、誰ものシズとモモも若くて美しく、理想に近づける。

 周囲が……熱い息に溢れている。


 あたしもそうだ。

 本気で感じている女の声。それはダイレクトにあたしの鼓膜から伝わる。


 本気だからこそ、体が錯覚するのだ。

 本気で、今ここで誰かに抱かれているように。


「……なぁ、今。あんたを熱くさせているのは、どんな要素?」


 モモちゃんが耳もとで囁いた。


「あの年寄達? あのデザイナー?」


 そしてあたしを間近から見つめた。


 理知的な端正な顔がまっすぐ目の前にある。

 冷ややかにも思えるその美貌が、今は燃えるような激しさを秘めているように思えた。


 メガネの奥の、神秘的な瞳があたしを捕らえる。

 奥で揺れているのは欲情の炎。


 小さいけれど、確実に形となる……モモちゃんの心。

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