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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 



 無音の世界に流れるのは――

 これが生きた現実だということを伝える、あたしの心臓の音。あたしの頸動脈の音。


 どくどくと、この確かな脈動が、嫌でもリアルすぎる現実を物語る。


 だけど……だけどね。

 これが夢だってこともある。


 そう、あたしは今熟睡中。

 きっと可愛いモモちゃんを見た影響で――。


「夢、にするなよ?」

「ひゃあ」


 耳に囁かれた、艶めいた声。



「アタシ、ナニモキコエズ、ナニモミエズ……」

「無かったことにはしないと、二度もあんたは言った」

「う……」



「今、俺の声だけ聞こえて、俺だけ見えているんだろう?」

「ううう……」


 無駄に高いIQをなめていた。いや、あたしが愚かなだけなのか。

 現実世界に固定されてしまったあたしは、逃げ道を失った。



 なんでそんなにモモちゃん嬉しそうなのか。

 嬉しくて嬉しくてたまらないというように、とびきりの笑顔を見せるモモちゃんは、無表情だったあのクソメガネ顔などどこにもなく。

 さらにあたしの鼓動が恐ろしいくらいの早さを持つ。

 
 体がモモちゃんに過剰に反応する。



 体が熱いのは図星をさされたせいではない。

 モモちゃんが、後ろからそっと抱きしめてきたから。


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