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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

……って。
なんでこの状態で、落ち着いたモモちゃんの声がしっかり耳に聞こえたの?
疑問にぱちりと目を開けて見れば、超至近距離とはいえ、モモちゃんの"閉じられた"唇の全貌が見え。
そして頬から隠すように、覆いのように拡げられた大きな手。
おまけに、反対の手であたしの口を抑えられた。
待て待て待て。
モモちゃんの唇がひとつしかないのだというのなら、モモちゃんの手の向こうにあるあたしの口腔内で、依然くねくね激しく動き回るのはなに!?
「ん、んんっ!?」
なに、これなに!?
「それは"クネクネデスネークン"だ」
モモちゃんは目を細めて、あたしの耳に囁いた。
……"クネクネデスネークン"!?
そのセンスない名前は――。
「俺が開発した、口腔内玩具だ。……それがなにか?」
艶めいたどや顔が向けられた。
そしてあたしは気づいたんだ。
なぜか後ろにベッド、前にスタンドマイク。
周囲があたし達を見ている。
ということは――。
あたし達の番、もう始まっているのでは?
ええええ!?
あの老齢カップルはどうなったの!?
モモちゃんに攻められてドキドキしている間、時間は早送り状態で。
まったく今に至る状況がわからない。
「あんたは"大根"なんだ、本能で艶技をしてろ」
ああ、まさか。
モモちゃんのこの眼差しは。
わざとモモちゃんを意識させるように仕向けて、あたしの真っ赤で戸惑うリアルなドキドキ顔を、周りに見せたかっただけとか?
で、このくねくねは。
添えられたこの手で、あたし達が激しいキスをしているように思わせている……そんなとこ!?
「ビンゴ」
モモちゃんは、そう笑って極めつけとばかりに顔を近づけた――。
それは傍目からはすごく淫らにしている深いキス。
だけど実は――。
……え?
ねぇ、今の……?
ちょ……っ、モモちゃん!?
そして――。
"あんあんあんっ、とっても大好きっ"
「はい、終了NE~」
……終了してしまったらしい。
あたしがどんなカップルらしい演技をしていたのかも依然不明のまま。

