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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
そんなあたしの前では、モモちゃんがインターホン越しにて、なにやら喋っていて、やがて『佐倉研究員及びお客様を確認致しました』と、ウグイス嬢のような綺麗な声がして、勝手にドアが開いた。
あたしが立入るために、モモちゃんの申請が必要だったらしい。
たかがえっちな玩具メーカーの研究所と侮っていたが、かなりのセキュリティー設備。そこまでえっちな玩具情報流失を怖れているのか。
えっちサマサマだ。
「レジャー施設は、ナツが今居るcherry girlsの研究所と繋がっている。施設のスポンサーであるcherry girls職員は、フリーパスで施設を楽しめるんだ。だが行き来は身分証が必要なんだ」
「モモちゃんバイトで身分証貰えるんだ?」
「俺は表向きは玩具開発の補佐…バイトの肩書きだが、ユリ姉に連れられて初めてここにきた中学の時、たまたまこの研究所の画面に流れていた、穴だらけの上にループばかりしているデータ解析プログラムを組み直してやったら、解析時間が大幅に縮小されたらしい。そこで年齢上臨時研究員扱いで、たまに顔出して機械の構築やデータ解析からのアドバイスをしているんだ。まあそこそこ発言権があるからこそ、ナツをサンプルという形にだけれど、ここに送り込めた」
淡々と言ったけれど、どこまでモモちゃん機械通なのか。
高IQの使われ方がえっちな玩具作りというのはいまだ納得いかなくとも、研究所から頼りにされてるモモちゃんはやはり凄い男なんだろう。
重役のユリの弟だからと優遇されているわけではないと思う。
「俺は、ただの引き籠もり機械オタクじゃないんだよ、お姉さん」
にやりとモモちゃんが笑う。
「見直した?」
そこにどことなく甘さを感じて、思わずドキリとしてしまったから。
ピュアピュアモモちゃんのくせに生意気と思いながらも、モモちゃんの問いかけに否定出来ないあたしは、
「そんなの、もうとっくに!!」
そう口を尖らせて、捨て台詞のように言い返すしか出来なくて。
するとその返事に少し驚いた顔を見せたモモちゃんが、笑みを浮かべたんだ。
身分証の写真とは違う、無防備に綻んだ顔――。
心の底から嬉しいと、そして照れてもいるように……。