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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
見ている方が照れてしまうほどの、同時に思わずぎゅと抱きしめて上げたい衝動をもたらすその笑みに、あたしの母性本能は大いに刺激され、胸の奥がきゅうきゅう鳴り響く。
そういう顔を見せて貰えるのが嬉しい反面、人を魅了出来る頭脳も美しさも持たずに、ポジティブだけが取り柄で生きるあたしは、やっぱりモモちゃんの凄さを妬ましく思えてしまって。
「なにしてるの。さっさといくわよ!!」
年上だというだけの優位性。
お姉さん風をびゅうびゅう吹かせて、あたしに着いてきなさいとばかりにずんずんと前を歩いた。
「あんたが前歩いてどうする。あんたは、俺の後ろにいろよ」
しかしその優位性すら許してくれないモモちゃんは、大人びた美しい笑みを湛えながら、あたしの前を歩き出す。
大きな背をあたしに向け、俺に着いてこいといわんばかりに。
またそれが悔しいあたしは、早歩きでモモちゃんの前に立ち、振り向いてふんと鼻を鳴らした。
絶対、負けないんだから。
「どこまで意地っ張りなんだよ……」
くくくと笑いながら、モモちゃんはそっとあたしの横に立つ。
「あんたのそういうところが……」
「ん?」
そして、あたしの手に熱が触れた――。
「……っ?」
「……。……荷物、俺が持つよ」
モモちゃんはあたしが手にしていた荷物を、肩にかけた。
もう言葉は紡がれることなく。
びっくりした、モモちゃんの手が掠っただけだったんだ。
手を握られるのかと思った。
触れた直後に力が込められたと思ったのは、気のせいだったんだ…。
モモちゃんはあたしの横に立ち、あたし達は黙々と歩き始めた。
あたしとモモちゃんの関係は、前でも後ろでもなく。
真横だということに、今まで戦友として闘い続けてきたあたしはどこかしっくりと感じながらも、今はなにかぎこちないままに歩いていく。
「素直に、なれたらな……」
自嘲気味に吐かれたモモちゃんのぼやきを知らずして――。