この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

 研究所の内部はふかふかな濃灰色の絨毯に覆われ、どこも無駄な作りを一切省いた、よく言えばスタイリッシュ、悪く言えば殺伐とした……そんな近未来的な雰囲気漂う無機質な空間だった。

 映画とかでロケに使われそうなこの研究所、無表情の受付嬢ひとり座っている以外、すれ違う人達もいない。



「ここにユリいるの?」

「どうだろう。ちょっと聞いてみる。そこに座ってて」


 帝王ホテルのラウンジのような、高級な雰囲気だ。

 ふかふかな椅子に座れば、思いきり沈んだ後にぼよんと横に弾き飛ばされた。


 なにこれ、恐い。

 椅子恐怖症になっているあたしは、立っていることにした。


「ユリ姉は少し前に帰ったばかりだそうだ」


 戻って来たモモちゃんは、小さく笑った。


「残念。ずっとユリと会えてもないし電話も繋がらないし。あたし嫌われてないよね?」

「いつもあんたの様子はどうかと気にして、落ち着いたら会いたいと言ってる。俺が間にいるから、ユリ姉も焦っていないだけだ。今は時機が会わないだけ、気に病む要素はなにもない」


 弟が断言してくれれば、あたしも心強い。


「ふふふ、弟とはこんな会ってるのにね。モモちゃんといるの半分にしたら、ユリと会えるのかな」


 そう冗談で言ったら、


「……姉弟であんたと会う時間をシェアしないといけないのなら。それならあんたはずっとユリ姉とは会えない」


 モモちゃんは痛いくらいに真摯な目を向けてくる。



「――ユリ姉相手なら、俺は、絶対譲らないから」




 ユリ"なら"。



 だったら――。


 誰だったら譲るというのだろうか、モモちゃんとあたしのふたりの時間を。


 あたしは答えがわかっている。

 だけど、その答えは口からは出て来なかった。


 なんだか切なくなってくる。

 なにかを訴えてくる哀切なモモちゃんの目が見れなくて。
 

 俯いてしまったあたしに気づいたのか、モモちゃんのやけに上擦ったような焦った声が聞こえた。


「冗談だ。ほら行くぞ」


 何事もなかったかのようにモモちゃんは笑って歩き出す。

 あたしは、横に並ばずにモモちゃんの後ろについて行った。それに対して前にいるモモちゃんは、大きなため息をひとつついた後、なにも言わずに歩き出した。

/920ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ