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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
やがてモモちゃんが、ひとつのドアの前に立ち、身分証を横の機械に通してドアを開けた。
「丁度今、ナツが休憩に入ったようだ。3回に1回の割合でいい結果を出せているようだが、ナツは完璧を求めている。だがあいつの消耗感が激しいらしく、これ以上は中止した方がいいというのが研究員の見解だ。ただ決定権はナツにある。あいつ次第だ」
ナツ……。
「ここはナツの居るところの隣にある控え室だ。隣にはナツしかいない。研究員は別の場所からモニターでナツを見ている。
とりあえず俺は、ここの研究所の高性能な機械を使って調べたいことがあるから、あんたはナツといてくれ。俺もどの程度で終わるか予測がつかない。連絡はここの内線でも外線でもスマホでも何でもいい」
ドアの奥にあったのは、これまたふかふかな長いソファが用意されている部屋で。条件反射的にあたしはソファの横で直立姿勢。
見た目に騙されるなと、学習済みだ。
「ナツと居ろよ。勝手に出歩くなよ? 歩くならナツと一緒だぞ。あんたは学習能力がないのが非常に心配だ、頼むから単独行動はするな。あんたは看板に矢印があっても、違う方向に飛びつく厄介な人間だということを、十分わかってくれ」
学習能力があるあたしに、くどくどと念を押すモモちゃん。
この成長した姿がわからないというのなら、証明してやろう。
絶対ひとりで出歩くものか。
振り返りながらも念を押しながら、モモちゃんは出て行った。
「心配性だな……」
この部屋は12帖くらいの大きさで、ソファの他にテレビや冷蔵庫やテーブルがあり、まるでホテルの一室のような趣があるが、ハル兄と共に居た最上階の特別室のような高級感はない。
ナツが来ると言っていたが、その気配がしない。
どこからナツは来るのか。
ドアは3つある。
ひとつはモモちゃんが出て行った、廊下に繋がるドア。
これはモモちゃんに鍵をかけておけと言われて、しっかりかけた。
もうひとつのドアは、ユニットバスとトイレに繋がっていた。
だったらもうひとつこそ……。
ドアノブに手をかけた瞬間にドアが突然開き、思わず悲鳴を上げて飛び退いた。
中から出て来たのは――。
「しーちゃん……?」
ガウン姿の、げっそりとやつれたナツだった。