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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 


 無理無理。

 こんなナツをまともに相手していたら、絶対あたしは欲情してしまう。今だって怪しいものだ。あたしの理性とは関係なく、身体が心が動いてしまう。


 厄介な淫魔さんを呼び起こすわけにはいかないの。

 だからナツも淫魔さんと一緒におやすみ下さい。


「ん……」


 素直な子供のように、ナツは目をつぶり口を閉じた。

 それだけであたしの興奮は落ち着き、あたしは安堵の息をついて興奮に滲み出た汗を手で拭き取った。



 いつもだって十分色気はあるのに、理性がある分、あれでも抑えられているというのか。


 この世でやばいのは淫魔よりも、ナツなんじゃないだろうか。



「しーちゃん、会いたい……」
 

 艶気ただ漏れ状態のナツは、目を瞑ったまままた涙を零した。


 噎せ返るような艶香を纏いながらも、その姿は儚げで。


 涙を流すその姿も一枚の絵。

 待ち人が来るのを願い続けるナツの姿は、さながら眠り姫。


「静流……」



 ああ――。

 呼び捨ては反則だって。


 駄目だよ、そんな風に呼ばれたら……あたし……。


 あたしの身体の芯がかっと熱くなり、あたしの思考のすべてが、ナツに染められていく。 


 胸が絞られているように、苦しくなってくる。


 ナツ……。


 "静流"


 あたしを、目覚めさせないで。



 そしてあたしは。


 あたしの名を零したナツの唇に吸い寄せられる――。


――なぁ、シズ。

 

「――っ!!?」


 はっと我に返り顔を離そうとした瞬間、あたしの頭がなにかにがしりと抑えられ、またもやナツの目が開いた。


 前より激しいとろみのついたココア色の瞳。

 そこには、あたしを求める熱がはっきりと見えた。 


 欲情した、妖艶な男の瞳――。

 そこに、驚きながらも魅入られて固まるあたしが映った。



「夢でもいいから……」



 ナツの熱い吐息があたしの顔にかかる。

 小刻みに震撼する長い睫毛があたしの顔を掠める――そんな至近距離で。



「しーちゃんと愛し合いたい……」



 あたしを求めるナツの唇が、



「ん、んんん……っ」



 何度も何度も角度を変え、あたしの唇を荒々しく貪った。


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