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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

「ナ、ナツ、ストップ。はいここまでね?」
 
「や」

 完全に夢見心地なのだろう。言葉数が少ない分、幼児返りを起こしている。だがこんなに壮絶な色気に満ちた子供はいない。こんなにいやらしい指と舌の動きをする子供はいない。これは羊の皮を被った狼だ。


 どうしよう。

 どうすれば変態王子は眠り下さるのか。

 とにかく眠らねばナツが危ない。
 
 あたしも危ない。


 あることが閃いた。


「ナツ、一度寝て起きたら、いちゃいちゃしよう?」
 
「ん」

 
 餌をちらつかせばナツはお眠りになることを了承する。

 よしよし、これでナツは眠るだろう。


 ナツが素直に目を閉じて3秒――。


「いちゃいちゃ……しよ?」


 早っ!!

 まるで本当の寝起きのように、気怠そうな声であたしを誘った。


「しよ?」

「………」

「しよ?」

「………」


 どう止めようか考えていたら、ナツがしくしく泣き出した。


「なんで泣くのよ!!」

「しよ?」

 涙で濡れたココア色の瞳が、あたしを伺う。

 ああ、なんでこんなに可愛いんだ、ナツは。

 ぐらぐらときてしまうポイントを、ナツは自分で分かっているようだ。

 昔からあたしは、突然のナツの泣き顔とおねだりに弱いのだが、せめてナツの無意識領域では綺麗さっぱり忘れていて欲しかった。


 ここはナツがどんなに泣こうが、心を鬼にして……。
 

「ナツ、まずは寝て!!」


「愛し合いたいんだ。静流――」
 
「――っ!!!」


 心の鬼、即両断。


 サバンナの帝王の弟君は、やはり一筋縄にいかない。


 
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