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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 


 攻防戦は平行線。

 無意識で動くナツは強し。元来頭がいいナツは、あの手この手と攻める手を変えて、時に妖艶に時に甘えっ子に、あたしを口説き落としにかかってくる。その切替えタイミングが絶妙で、あたしが身構える前に既に変化球をつけてくるからたまらない。息つく暇も無いとはこういうことを言うのだろう。あたしまでげっそりだ。

 ああ、麗しき王子様顔で、ここまでの全力投球の情熱を他に向けたら、きっとナツはノーベル賞でもとろうほどに大成するだろうに、あたしの下のお口に入れる目的のために、全エネルギーを無駄に使ってしまっている気がする。なんて残念な子だろう。……いや、あたしが罪作りなのか。


 とにかく、普通の状態ならまだしも、よぼよぼとして今にもぶっ倒れそうに体力で、性交しようものならナツの命はないと思う。ここはあたしが絆されてはいけないのだ。断固拒絶しないと!!

 今のナツは90歳だと思った方が無難だ。

 さっきのゲームで優勝した、入れ歯フガフガシズオさんより年寄だと思え!! そうだあれは、ハル兄の未来の姿ではなく、今のナツの姿だ。


 このままだとナツは腹上死となる。

 繋がったままの状態で病院に運ばれるんだ、それだって恥ずかしいだろ!!


 あたしは必死に自分自身に檄を飛ばす。


 シズル、ファイト!!


 だけど――。


「しーちゃん、しよ?」


 ああ、光輝いているナツの肉体。

 90歳の妄想を消し去り、思わず頬を擦りつけたくなるようなきめ細やかな白い肌。


「ねぇ、静流……?」


 とろとろの蜂蜜でまぶされたココア色の瞳は甘すぎて。

 甘さを感じなくなった身体が、ナツの甘さを感じたいと疼き出すんだ。


 ナツのフェロモンに、あたしの女の部分が反応する。


 ああ、なんでこんなに色っぽいの。

 これは魔性だ。


 頭の中でカチカチと音がし始める。


 これは――、淫魔を封じる沢山の鍵が外れていく音だ。
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