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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

 コンコンコン。


「しーちゃん、壁にお水を流すボタンと一緒にウォシュレットあるから、それ使ってみると便秘にいいかも。ただボタンを押してから出てくるまで変な音して時間かかるから、びっくりしないでね……」

「ありがとう…。優しいナツに救われる」


 ナツの心に、さらなる涙がちょちょぎれる。

 あたしは便秘じゃないけれど、お腹の緊張も緩和されそうだ。


 カラカラカラ……。


 よし、最後に目を拭き口を拭き。鼻までかんで便器へポイ。

 さあ、旅立てシズル!!

 帝王に惑わされるな。もういい加減学習してきたはずだ。なにを優先すべきか考えるのが大切だと。不遜な帝王ルールに囚われて振り回されている限り、迷妄のしがらみからあたしは抜け出られないのだと。


 今、あたしがすべきことは――!?


 あたしは、びしぃっと中指をたてて、指と誓い合ったように大きく頷いた。

 今優先して考えるべきは、ナツを早く休ませること。

 この中指で、ナツを昇天させるのだ!!



 突き立てた中指を天井に向けて、うぉぉぉと雄叫びを上げると、ナツからのノックが響いた。


「しーちゃん、すごい声聞こえたけど、そんなに出なくて苦しいの? それとも出た歓声? しーちゃん頑張ったの報われた?」

 声を弾ませるナツに言われると、ふんばる行為は何にも代えがたい素敵すぎる努力に思われるが、あたしは大体ふんばっていない。

 嘘をついて心配かけていることに少しばかり罪悪感が芽生えるが、この件を終わらせねば、あたしは永遠にトイレのシズルさんなってしまう。


「しーちゃん、いっぱい出た?」

「うん、出た出た」

「たっぷり?」

「うん、たっぷりたっぷり」


 適当にそのまま返していたけれど。

 ……ああ、あたしはなんという会話を笑顔でしているのか。

 だけどこれで終わりだ、深く考えるんじゃない。


「じゃあ出ま……」


 意気揚々と壁にある「大」ボタンを叩きつけた時だ。



 ゴボ。

 ゴボボボボ。



 嫌な音がしたのは。



 まさか、ねぇまさか――。


「うわっ、流れないっ!!」


 調子に乗ってカラカラしすぎて、1ロールほとんど便器に入れてしまったために、どんなに「大」のボタンを連打しても膨大なペーパーが流れない。


 詰まったの!?

 え!?

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