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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

 その時だ。


「なに、なに、なに!? 今度はなに!?」


 詰まったペーパーが、今度は水流と共に勢いよく上に飛んだのは。



「ひぃぃぃぃぃっ!!」


 大噴水だ。



 驚いたあたしは、慌てて蓋を閉めたのだが、その蓋を開け放つ程の勢いの強さ。悲鳴を上げて逃げるあたしは、それが直接降りかからないトイレの片隅で壁の一部と化し、もうどうしていいのかわからないパニックに、震えて固まる。


 淫魔、吹き上がるペーパーに怯える。

 涙は止まったのに、それ以上の水浸しとはいかに!!


 ドンドンドン!!


「しーちゃん、どうしたの!?」


 ドンドンドン!!


 ただいま、しーちゃんは妖怪"ぬりかべ"です。

 ひとつ間違うと"ぬれかべ"です。

 あ、ちょっと前までナツに触られて濡れ……。


「くふふふ……」


 ああ、思考が頽廃して、卑猥な奴らに仲間入り。

 どうすればいいのかわからず、とりあえず笑って現実逃避。



 ドカッ。



「大丈夫か、静流!?」


 ドアが蹴破られたようで、ナツが勇ましく入ってきた。

 その凜々しい姿に、どきんと、心臓が跳ね上がった。
 
 こんなアラサー淫魔を、おこがましくもお姫様にたとえていいのなら、お姫様の危機に助けに現れるのは、童話通りの麗しの王子様……。


「王子様、あの怖い噴射のお化けをなんとかして……」


 ――止まったのは一瞬だった。


「もぅ、なんでウォシュレット強度、最大にしてるの?」


 ナツの人差し指だけで、壁のボタンを押すとそれは消え。


 王子様……。


「だけどよかったね、う○ちが流れた後の噴射で。そうじゃなかったら大変だったよ?」


 笑顔の王子様……。


「それでも…ふふ、可愛いな。なんか初々しくて」


 せめて姫を助けにくるのなら、お洋服を着て上向いている息子さんを隠してご登場願います。


 すっぽんぽんは、ちょっといただけません。
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