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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

「ロイヤル……、なんだか王子様にはいい響きだね。ナツっぽい」

「……王子様って、僕のこと?」


 ナツが顔を覗き込んでくる。

 泡でモコモコのあたしの髪型は今どんな状態なんだろう。


「そうだよ。ナツは王子様」


 するとナツは、ぱっと顔を綻ばせた。


「嬉しい……」

「ナツは皆からもそう言われているんじゃないの?」


 あ、"冷酷王子"だっけ?


「誰に言われても関係ないよ、僕だけのお姫様にそう言って貰えなきゃ……。僕、しーちゃんにとっての王子様は、波瑠兄だと思ってたから」


 "ハル兄"


――肝に銘じておけ。


 どきん。


 忘れようとした理不尽な捨て台詞が蘇生されかかり、頭を横に振ったら泡が目に入って滲みた。


「大丈夫? もう流そうか……」


 そしてナツはあたしの目の洗浄に少しシャワーを顔に当てると、まず自分の髪を洗い落とした。

「しーちゃんにモコモコ垂れたら、またしーちゃんの目が滲みちゃうからね」


 優しいナツは、濡れてモカのようないつもより濃い髪の色を見せる。


「あれ、ナツ…、思いきり髪を濡らしたらストレートになるの?」


 ナツはあたしの髪の毛にシャワーをかけながら苦笑した。


「元々癖毛だからストレートにはならなくて。しーちゃんは艶々の黒髪ストレートだし、波瑠兄やサクラのようなサラサラな黒髪になりたかったんだけど。だからどうせなら違った雰囲気にして、僕の猫毛と癖毛が目立たないようにと、この頭でもう何年かな……」

「ナツがストレートの黒髪……。なんだか想像つかないや。ナツは今のままがいい。似合ってるし」

「ありがとう。へへ、よかった」


 ナツの笑顔はほっこりする。

 昔から、見ていると精神が潤ってくるのは変わらない。


「しーちゃん、痒いところはありませんかぁ……?」


 心地よいシャワーの温度が、あたしの頭皮を刺激する。ナツのマッサージ効果で、きっとあたしは抜け毛知らずの艶々髪になりそうだ。

 ああ、極楽極楽。


「ありませーん。とっても気持ちいい……」


 とろりとした目でナツを見上げてそう言うと、ナツはシャワーを止めて、突然口づけてきた。
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