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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
「ずずっ……」
「ずっ……」
あたしが鼻を啜ったら、斜め上からも似たような音が聞こえた。
思わず見遣るとモモちゃんと目が合った。モモちゃんの目が潤んでいるのを確認した直後、モモちゃんは証拠隠滅とばかりに眼鏡を外して目を擦って、なにもなかったようなクソメガネ的な冷ややかな表情で、右斜め45度であたしを見下ろした。
無言で冷めた目をしているモモちゃんに、漫画のような吹きだしをつけるとすれば、あたしに向けられている……『馬鹿め』。
モモちゃんも、ナツの悲しみに心打たれて泣いてたくせに。どんだけ負けん気が強いの!
あたしも目を擦って証拠を消し、モモちゃんに負けじとどや顔をみせると、モモちゃんの美しい顔が僅かに引き攣った。
「……本当にあんた、負けず嫌いだよな」
「モモちゃんに言われたくないわ!」
そう無言で軽く睨み合っているあたし達の耳に届くのは、いまだ続くナツの細い叫び声。既に走る騒音化している気がする。
ナツ、王子様なのにな……。
立って微笑むだけで甘い甘い王子様なのにな……。
なんともやるせない心地でため息をついたら、モモちゃんからも同じような息の音が聞こえた。
「友達、やめたくなる?」
「いや…一時期より余程元気で、喜怒哀楽がはっきりしている。それは喜ばしいことだから。……極端すぎる気もしないでもないが、あれもナツだと思えば、別に」
さすがは――。
「"りあるびーえる"って言うなよ」
先に見抜かれたあたしが、酸欠状態の金魚のように口をぱくぱくしていると、あたしの頭の上に、大きな掌がぽんと乗せられた。