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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
「……?」
頭に手を置いたまま、押し黙ったモモちゃんが、やがて自嘲気な笑いを見せた。
「もう…こうやって、あんたに触れられなくなるんだな……」
切なくなるような、悲しい声を出して。
「え、モモちゃん、あたしに触りたいの!? えっち!!」
「なっ、違う! そういう意味の触りたいじゃ…!」
「きゃあ、モモちゃんのえっち、えっち!」
「違っ!」
クロスさせた両手で自分の体を抱くようにしながら、わざと明るく振る舞うと、モモちゃんは、真っ赤な顔で狼狽を始めた。こういう反応が、やっぱりモモちゃんは可愛いと思わせる。
「ほら、あたしと仲良くなったのは夢だったんだ…みたいなお馬鹿なこと、勝手に嘆いていないの。そんな、ありえないことをぐだぐだ思って、ひとりで暗い顔をしないで」
なにか反論の声がしたが、あたしは無視してモモちゃんの腕を強く掴んだまま、すたすたと歩き始める。だが、容易に引きずれないほど、モモちゃんは重い。モモちゃんの体重のせいではなく、モモちゃんが動こうとしていないからだ。
あたしは足を止めて、モモちゃんを見上げて言った。
「またあたしにクソメガネって呼ばれたい? それともあたしのこと、綺麗なお姉さまって呼びたい?」
「なんだよ、その二択……」
「え、すぐ答え出て来ないの!?」
「さあね」
あたしの腕がふっと軽くなる。モモちゃんがあたしの手から腕を離したからで、今度は逆にモモちゃんがあたしの手首を掴んできた。
「俺があんたに呼びたくて、あんたから呼ばれたいのは……」
そしてモモちゃんは身を屈めて、あたしの耳に囁いた。
「名前」
横からあたしを見つめるその目が、挑むような超然とした光をたたえた。