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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
 


「俺は……名前にコンプレックスがある。ナツですら下で…名前で呼ばせなかった。だけどあんたにそれを許している意味、ちゃんとわかってくれよ?」


 そしてモモちゃんは、熱っぽく潤むその瞳でじっとあたしを見つめたまま、掴んだままのあたしの手首を持ち上げ、あたしの手の甲に柔らかな唇を落した。

 それはあたしをお姫様に見立てた、崇高な騎士の誓いのような仕草なのに、その眼差しは決して清廉とは思えないほど、あたしを誘惑しているような蠱惑的な艶を色濃く含んでいた。

 
「な、シズルさん……」


 あたしが、侵される…!


 モモちゃんの艶やかな声があたしの名前を紡いだ途端、許容量を超え、顔がぼんっと沸騰した。

 顔から熱が蒸気となって、しゅうしゅう白い煙になって、身体が霧状に消えてなくなっていきそうだ。


「どうしたんだ? 赤いぞ、顔?」


 近いです、近いですよ、お顔が!

 そう叫べないあたしを満足そうにみつめて、モモちゃんがおでこ同士をぶつけた。


 モモちゃんの形いい薄い唇が、至近の距離で動く。


「熱はないな」


 吊り上げられた片方の口端。

 ……絶対、わざとだ!

 
 

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