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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
からかわれていることに抗議したいのに言葉にならず、ただうーうー唸るあたしの前で、モモちゃんはふっと口元を緩めて、甘く笑った。
「……我慢したんだぞ、俺」
「……?」
あたしは顔を上げた。
風に揺れるモモちゃんの前髪の間から、切なそうに揺れる目が、じっとあたしを見つめていた。
「一晩中、手が届く距離にいるあんたを抱きたいの、我慢した。…その前に、ナツがなにをしたいのかわかっていて、ふたりきりにした。
……ひとりで別室にいた俺が、どんな心境でナツに抱かれるあんたの姿を想像していたか、わかるか?」
「……っ」
「だから、電話の電源落とした。そうじゃなければ、おかしなこと口走って、あんたを…シズルさんを、奪いにいきたくなるのが、初めからわかっていたから」
「……っ、△◆◎※!!」
あたしはもう、壊れたゼンマイ人形だ。
「それくらい……意地悪させてくれよ、ナツ……」
そうモモちゃんが悲しげに目を伏せて、少しだけ横を向いた時だった。
「あんた、短距離自信あるんだよな?」
唐突な話題に、やはり人としての言葉がまだ出ぬまま、頷くと。
「ダッシュ!!」
ガラスに映るものを見ていたらしいモモちゃんが、あたしの手を引いて走り出した瞬間、あたしがいたその場所に、猛速度で駆け寄る複数の黒づくめの男達の姿が、視界に入った。
一気に現実に引き戻され、無性に嫌な予感がする。
「あんたを狙ってる連中だろう。目立つナツがいなくなったの見計らって動き出したに違いない。こっちだ!!」
あたしはモモちゃんと手を繋いで走った。