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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
そんな中、モモちゃんだけが落ち着き払っていた。自らのと、とにかく車が動く度に頭をぶつけるあたしにまでシートベルトをつけてくれながら、殊勝な物腰でバトラーモモは言う。
「すみません、波瑠さん。お呼びたててしまい……。昨日の夜からずっとこちらの動向を窺っていた連中が、今朝突如散りだしたのが気になって」
モモちゃんから語られる事実に、目から淫魔だ。
「はい!? なにそれ初耳だよ」
「今朝、既にナツも感じていた。それでナツが、目立ってしまえば大勢の中での手出しは、しにくいだろうと」
「ナツまで気づいていたの!? ああ、だからナツ、あんなに大騒ぎして注目をあびてくれていたのか。最後まであんなに恥ずかしい姿を晒して助けてくれようとしていたなんて……」
「いや、あれは本気だろう」
「そうですか」
ナツは天然なのかなんなのか、よくわからない。
「それで波瑠さんに連絡して、波瑠さんがここに車で来る時間まで、時間稼ぎをしていたんだ」
「ほぉぉぉ。だけどモモちゃん、秒単位まで約束してたの?」
「いいや。波瑠さんはジャストに来る自信があったから」
「なにゆえに!」
「俺と同じA型だからだ」
あたしは顔を引き攣らせた。
「A型だったら、先にくるんじゃ……」
ハル兄信者のモモちゃんに、なにを言っても通用しない。
「サクラ、賢明な判断だ。他の奴呼んだら、お前を許さねぇぞ」
「はは……よかった……」
乾いたような笑いを見せるモモちゃん。
バトラーモモちゃんも帝王様にお仕えするのは、命がけらしい。
それでも仕えたいと望むんだから、モモちゃんはイニシャル通り、Mだよね。
……などと和やかに会話しているが、今はかなりの速度でバック中なのだ。もうそろそろ減速するかなにかすると思っていたあたしだったけれど、減速どころか速度を表示しているメーターがぐんぐんとあがる。