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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
そしてバックの先からは、こちらに向かってくるワゴン車が見えた。
つまり、このままだと衝突間違いないのである。
「ハル兄、ハル兄、ハル兄!! 危ない、ぶつかるぶつかる!!」
ワゴン車なんて、なんのその。
あたしが慌てたらさらに速度が上がった。
やばい、やばいって!!
この車がどんなに優れた高級車であっても、装甲車なみの強靱さを誇る007の車(ボンドカー)とは違うんだから、なにも出て来ないんだから!
「俺をだれだと思ってる、シズ!!」
止まるのは、ワゴン車かハル兄か。
「俺様に、不可能はない!!」
「ひぇぇぇぇぇぇっ!!」
後ろから急ブレーキの音。
腰抜け相手にも、ハル兄は止まらない。
傲岸不遜な帝王様らしくどこまでも止まらない。
「ぶ、ぶつか……」
「特別に、俺様のドライビングテクを見せてやる」
「いらないいらない、見せて貰わなくていいから、無事に命が残る…平和かつ安全な運転を……」
「ああ゛!? 聞こえねぇ」
「……ハル兄のばぁか」
「なんだと、こら!! 現役医者をなめるな、アホタレ!」
「こんな小声も、聞こえてるんじゃな……ああ、ごめんなさい、あたしが悪かったです、だからスピード上げないで、ひぃぃぃっ、止まれ止まれ止まれ!!」
キキィィィィ。
――ワゴンとぶつかる数センチ前。
響いた音は、停止するための音ではなかった。
減速なしで急角度で左に曲がった音だった。
一度も止まらずに、速度を出したまま滑るようにして方向を変えるのを二回も繰り返し、今度はバックではなく、そのまま正常な進行で走り出した。
「バックからの連続ドリフト!? すげぇ……」
モモちゃんが目をきらきらさせているが、あたしにはそんな余裕はない。あたしからは恐怖に涙がぼたぼただ。