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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました

 ドリフトだろうがドラフトだろうが、高速度で車が滑るように動いているようなこの感じ、障害物がないところでのテクをあたしは見ていた側であったなら、あたしもきゃっきゃしたかもしれないが、ここは駐車場だ。

 こんな暴走車、敵も諦めてくれればいいのに、またまた左右からこちらに向かってくる黒いセダンが二台。


 やめてくれ、やめてくれ!!

 帝王様を挑発しないで~!!


 だが祈り虚しく、セダンはこちらに来る。

 そして――。



「ハル兄、前! 左右から来た2台の車が、横一列で通せんぼ、ああああ」


 
 バックミラーを覗くと、ハル兄が好戦的に笑っているのが見えた。

 再び、がしゃがしゃとシフトレバーが動く音がする。



 ……不吉な予感がする。

 これは安全を第一に考え、ブレーキで止まる動きではないことくらい、運転免許のないあたしでもわかる。


「ハル兄、止まって!! あれは抜けないから、止まらないとぶつかるから!! ぶつかったら、死ぬから!!」


 だが、また速度が上がる。



「ハル兄、ハル兄!!」


 あたしの声はもう涙混じりの悲鳴だ。



「モモちゃん、モモちゃんからも説得……モモちゃああああん!!」


 帝王様に心酔している執事兼参謀は、目がきらきらして唇も半開きのトランス状態。こっちの悲鳴なんて、素通り状態のお顔だ。
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