この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
なんで、なんで嬉しいと思えるの!?
危機が迫っているんだよ!?
通せんぼされて、猛速度で動いているんだよ!?
あたしがおかしいのか!?
普通はこういうもんなのか!?
じゃあここは喜んでいいところなの!?
「あは、あはは……」
パニックに泣き笑いしていると、ハル兄の声がした。
「シズ、俺がお前を死なせたりするわけねぇだろうが!!」
その声を合図に、車は――。
「うぎゃあああああああ!!」
横並びした車の上に飛び上がり、二台分の車の天板の上へ着地…と同時に、ハンドルを大きく切って車の向きを変えて。そこから飛び降りるようにして、一気に……出口の緩やかなスロープの上に悠然と躍り出たのだった。
外に出れば、曇り空。
どこかでカラスの鳴く声が聞こえてくる。
都会から外れた、長閑な自然の光景。
……あたしは助かったのか?
助かったんだよね?
………。
「ブラボー!! ハル兄、ハル兄、ブラボー!!」
あたしの喜びと、モモちゃんの拍手に、心底ご満悦の笑みをしている帝王様。そして咥えていたタバコの灰が落ちた。……モモちゃんが両手を丸めるようにして、その灰を受け取る。なんという奴隷精神の徹底ぶりだと、驚愕ものではあるけれど。
帝王様のタバコが燃え尽きるまでの、そんな僅かな時間。
我らが帝王は、一度も減速せずに敵の車をまいたのだった。
帝王のドラテク、恐るべし!!