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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
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ハル兄の乗りつけた、外装が黒色(だったと思う)の左ハンドルの外車は、今まで見たものとはまた違う車だった。
迎車が二人乗りでなくて本当によかった。二人乗りだったら、またあたしは、高速道路を爆走するこの車の中で、助手席に座るバトラーモモの足置きになりながら、その速度の恐ろしさにぶるぶる震えていただろう。
この車に入る際、ドアが自動で開閉していたと思ったけど、ハル兄が中から手動でドアを開けて、モモちゃんが乗り込むと同時に閉めただけのことだったらしい。あまりにジャストなタイミング過ぎて、自動のように思えただけだった。
ハル兄が気怠げに手を置く、黒いハンドルの真ん中には、フォークみたいな三つ叉の銀色の模様がついている。
これがこの車のエンブレムらしいが、いつものことながら、あたしは車の価値がよくわからない。ただ、この車も、高いのだろうことくらいはわかる。震動も少ないし、内装はシンプルだけど黒い革張りでスタイリッシュだし。
だが高級ランクとしてはどんなものなのか、さっぱりわからない。この車はメジャーな車なのだろうか。
こっそりと、何でもよく知るモモちゃんに聞いてみた。
「この車って、なんていう車なの?」
さすがのモモちゃん、この車の名前を知っていたらしい。
やや興奮気味に、自慢気に教えてくれた。
「え? "混ぜたらティの句アポロポテチ GPS"?」
ハル兄の車の名前は、またもや長いカタカナの呪文。
これは開発元がアポロとポテチ好きと見た。
混ぜたらティの句、とは…アポロとポテチを紅茶で頂くと俳句を作りたくなるほど最高、という意味に違いない。GPS機能までついているのか。