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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
車は順調に都心に向かっていく。
追跡者はいないようだとのハル兄の声を最後に、あたしの意識はぷっつりと途切れた。
高級車だからか、座り心地が良すぎて、うとうととなってしまったのだ。
そして――。
「……つまり、片倉遊佐の過去の情報一切が、隠蔽されていると?」
あたしは、ハル兄の硬い声で目を覚ました。
やばい、黒いシートにたっぷりの涎……。
服の裾でゴシゴシ擦ったら染みが広がって、密やかに慌てる。
うわあ、たっぷり染み込んじゃってるよ……。
ゴシゴシ、ゴシゴシ。
「3年前から、経歴不詳の謎のデザイナーとして人気が出たらしく、Dangerous Scentの専属デザイナーとして、招致されたのが2年前。そしてナツがモデルになったのは、高校の卒業前。今から半年くらい前ですね」
「デザイナーになる前の情報は、お前の腕をもっても出ないのか」
ゴシゴシ、ゴシゴシ。
「はい。ただ……3年ほど前の雑誌の対談で、片倉がN県の自然の話を具体的に持ち出したことがあり、N県と縁があるのかなと」
「N県……、シズの母親が育った場所だな」
ゴシゴ……。
「え、ママがなに?」
今まで染みを消すのに夢中になりすぎて話を聞いていなかった。突然ママのことが耳に届き、驚いたあたしは染みを隠すために、前の座席の頭部分を両手に抱くようにして、運転しているハル兄の近くでお話しようとしたが、
「あぅっ」
忘れていたシートベルトに引き戻される。
「シズ。片倉は……淫魔かもしれねぇ」
「片倉……ええと…」
どこかで聞いた覚えが……。
「まだあんたは覚えてないのか! ナツにそっくりなデザイナーだ」
「アダルトナツのこと!? ……ぁうっ」
またシートベルトに戻された。