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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
  

 あたしは……、病院に忍び込んだ強姦魔が消えるところを見た。正しくは、あたしが消したのだ。

 不本意ながらの交わりによって、あたしがあのオットセイを消したのだと、確かにそれは自覚している。


 だとしたら――。



「あたしは……化け物の仲間なの……?」



 佐伯兄弟に庇護されていて、現実を直視していなかった。あたしだって、人を殺しているのだ。いやらしい方法で。


「淫魔は……、人を殺していく側の存在なの!?」


 無性に悲しかった。

 ミイラにしたのがアダルトナツでもアダルトナツでなくても、あたしにはどうでもいいのだ。そうして人を殺した存在が、淫魔だと……あたしと同じ種のものだとされることが、無性に悲しくてたまらなかった。


 皆、口に出さないだけで、そういう存在だと思っていたのだろうか。

 あたしは、佐伯兄弟を危険に陥らせてまで、生きる価値のない……化け物なのではないか。佐伯一家に甘えすぎていたのではないか。

 12年後に目覚めたのは、間違いだったのではないか。



 そんなあたしの嘆きを、



「アホタレ」


 カナタナ四文字で却下したハル兄は、鼻でせせら笑った。



「お前が、片倉に仲間意識芽生えさせているのが、腹立たしい。悲劇のヒロインぶって、自分から"そっち側"の仲間になるな!」


 それは強い語気の声だった。


「お前が男に危険な淫魔であろうが、俺にとってお前は、……俺がおむつを替えた、昔からなに一つ変わらないアホタレな女にしかすぎねぇよ」



 気持ち悪い淫魔と特別扱いしないハル兄の声を聴いたら、泣きたくなって鼻の奥がつんと熱くなった。


 どんなに傲岸不遜であろうと、困った時にハル兄に縋ってきたあたしにとって、ハル兄に葉山静流なのだと認められたことは、あたしに生きていいと免罪符を与えられたような気になったんだ。


 嬉しかったのだ。

 ハル兄のいる世界に、あたしを入れて貰えたことが。


「ありがとう、ハル兄。


あたし本当に――…

アホタレでよかった!」


 純粋な感動をしたら、横にいるモモちゃんから、なんだか哀れまれているような、気の毒がられているような、そんな目を向けられた。


 なぜに!!

 なぜに、綺麗なお姉さんの感動がわからぬ!!

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