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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
「波瑠さん。またなにかあったら言って下さいね。あのアプリなら、大概の場所では連絡つきますから」
回り込んでハル兄に見せる顔は、なんて素敵な爽やかな笑顔。
これなら世の女共が、魅了されてしまうだろう。
「了解。この借りは忘れないからな」
そしてハル兄も、いい笑顔だ。
本当にモモちゃんを可愛がっているのがわかる。
「そんな堅苦しく考えないで下さい。俺が好きでやっていることなんで」
ハル兄が口元で笑いながら、開けた窓から手を出し、モモちゃんをもっと近寄るようにと指でちょいちょいと呼びつけた。
そして、多分……内緒話をするのだと思ったモモちゃんが頭を下げて、耳を向けると……、ハル兄はモモちゃんの耳ではなく、その大きな手で黒く艶やかな…さらさらの髪をくしゃりとしたのだった。
ハル兄なりの愛情表現だ。
「……っ!!」
その時のモモちゃんの顔!!
本当に嬉しいんだなってわかるほどの、その笑みを……モモちゃんは自覚しているのだろうか。
クールで冷ややかな、作った笑いを見せていたあのクソメガネが、こんなに感情豊かな可愛い男の子だなんて、昨日と今日がなければ、あたしにはわからなかった。
さすがはナツの親友!!
さすがあたしの親友の弟!!
いまだその親友とは連絡つかないけれど、いつか会えるだろう。
だってその弟とは、これからも頻繁に会うんだから。
ハル兄がクラクションを鳴らして、車を出す。
モモちゃんが手を振りながら、見送ろうとしてくれている。
あたしは窓を開けて上体を乗り出し、大きく大きく手を振った。
「モモちゃあああん、またねぇぇぇぇ!! また会おうねぇぇぇ!!」
モモちゃんがなんか言ってたけれど、涙を目にためて叫ぶあたしの耳には言葉として届かない。
……どこかで聞いた台詞だと思いながら。