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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
やがてあたしの側に、海の景色が広がった。
12年後に、初めてみた海だ。
ハル兄側の開けられた窓から流れこんでくるのは、清々しい潮風。
「うわあっうわあっ、海だ!!」
あたし側の窓を開けて、あたしは喜びの声をあげた。
その壮大な海原の煌めきに、興奮してしまう。
目覚めたら、いつも人工的なものの中にいたあたしにとって、大自然を全身で感じられたのは、12年後に目覚められた感動をさらに強くさせた。
変わらぬこの大自然の中で、あたしは生きているのだと。
あたしは、きちんと12年後にも存在できているのだと。
母なる海とよく聞いてはいたけれど、回帰したくも思える魅惑的な灼爍とした青――。
昔は海が大嫌いだった。
魚を捌く魚屋や寿司屋のような、生臭い匂いを放つ海に、あたしを地獄に引きずり込む底なし沼のようなおどろおどろしさを感じていたものだ。
海を克服したのは、ひとえに……バタフライを叩き込んだスパルタハル兄のおかげだ。ハル兄のおかげで、海への恐怖感がなくなり、さらに海は宝石のように綺麗に輝くものだと、その魅力に気づかせてくれたのだ。
海にきたのは、何年ぶりなんだろう……。
「少し……寄ってみるか」
ハル兄の優しい声に、あたしは笑顔で頷いた。