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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
 

 非情なハル兄は、ハンドルの上に突っ伏したまま、また前方を見つめている。今まであたしに向けていた、あの熱が籠もった瞳が嘘のよう。その瞳にあたしを映そうとしない。


「ハル兄……っ」


 ハル兄都合で突然に突き放されたこの理不尽さに呼応するように、中途半端で放置された秘部が、じんじんと疼いて切なくて切なくてたまらない。


 寂しいよ、途中放置しないでよ!


 かといって、こんな人の目がある中、しかも隣にハル兄がいるのに、ひとりでなんて出来ない。

 不覚にも前にしてしまったのは、サックスを吹くハル兄があまりに格好よすぎたその興奮の名残。衝動的なものなのだ。


 我慢しろ。

 我慢だ、シズル!!


 そう思っても、視界にハル兄が見えると、たまらなくなるんだ。

 あたしの身体は、ハル兄に覚醒させられ、発情している。


 男を感じさせるあの指で荒々しく、あたしの花園を最後まで散らして欲しい。あの肉厚な唇で愛でて欲しい……。


「ねぇ、ハル兄……っ」


 たまらず、甘ったるい声を出してしまった。



 ……あたしはいつから、おねだりする女になってしまったのだろう。

 理性がどこかであたしを窘(たしな)めるが、それ以上に…立て続けに触られた、細胞まで侵されるようなハル兄の感触が消えないのだ。

 そっぽを向かれると、ますます切なくて仕方がない。心も体も。



「ハル兄ってば!」


 ハル兄の身体を手で触ると、ハル兄はハンドルに突っ伏したまま、その目だけをあたしに向けて来た。


 その直線的な痛いくらいの視線に、あたしの身体がざわめく。

 視線で犯されている気分になる。


 喉の奥がからからになってくる。

 変な声が出そうになる。


 欲しい、欲しい……。


 ハル兄が欲しい。




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