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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
 

 怪訝な表情をしたままのあたしに、ハル兄はさらに妖艶さを纏い、


「つまみに食っていい?」


甘やかな光を宿した目が、柔らかく細められた。


 駄目だ、このままだとハル兄にのぼせてしまう。


 ハル兄の顔が見れない。体が熱くて息苦しい。


「こっち見ろ」

「……っ」 

「つまみにするぞ?」

 
 ……こいつ、冗談じゃなく本当にする男だ。


 仕方がなくちろりとハル兄を見た。すると嬉しそうにふにゃりと顔が綻んだ。そうしたあどけない無邪気さを見せるハル兄は、金髪時代からなにひとつ変わっていない。

 こうやって、あたしの緊張を解いていくんだ。

 だけど落ち着かない胸の内。ハル兄の"男"に酔い、正体不明の動悸を激しくしているあたしは、突如ハル兄に抱きしめられるようにして、一緒に動いた。

「ハ、ハルに……波瑠?」


 途中で睨まれ、名前を言い直すと、満足そうに帝王が笑う。


「ここからの方が、景色見えるだろ?」


 絶景ポイントに連れてくれたらしい。


「いい景色だろ」


 横向きのハル兄が、視線だけをあたしに向けた。


「うん、凄いね。帝王ホテルの最上階の夜景も素敵だったけど、この大自然も凄いよ。なんか独り占めしているみたい」


 あたしは、指を拡げた掌を海に向けた。


「あははは、やっぱり掴みきれないや」


 笑い顔をハル兄に見せると、ハル兄は切なそうに微笑んだ。


「これも、お前が目覚めたら、見せたかった……」


 そして、ちゃぽんと、湯の音がする。


「波瑠……?」


 ハル兄があたしの肩に手を回して抱き寄せ、あたしの頭にキスを落した。


「今でもまだ夢見てるみてぇだ。……この広い自然の中、お前とふたりきりなんてさ」


 そして、あたしの耳もとに、艶やかな声で囁いた。


「すげぇ幸せ」


 
  
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