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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
 

 "すげぇ幸せ"



 やるせないような、だけど心から喜んでいるような、ハル兄の声が頭に反響する。


 やばい。やばいぞ、やばすぎる。


 傍若無人な帝王様が、なんでここまで甘えっ子モードになるんだ?

 幸せってなに、幸せって!!

 
 これはきっと湯にのぼせているからだ。もしくは酒だ、ぼったくり酒に酔ったからだ、うん、そうに違いない。


 そんなあたしの心の中での葛藤をつゆ知らず、帝王様は実にうっとりとした顔をして、大きな手であたしの頭を撫でて言う。


「お前、わかっているか? ここから見える海でお前、溺れたの」

「え、ここなの!?」


「ああ、そして俺がプールで特訓して、この海で挽回したんだよ。海克服して最強になったろ?」


 だけどモモちゃんのクロールと、波のプールにやられました。

 ……なんていえるわけがない。


「最強だから、あんなに潮吹いたんだな、派手な放物線だったもんな……」


 慌てて帝王様のお口を塞ごうとしたが、その手を掴まれなおも続く。


「お前二度目だろ、潮吹いたの。覚えてるか、俺の部屋で……」

「わーわーわー、言わなくてもいいから、そんなこと!!」

「ああ、潮くらいは"そんな"ことか。なにせお前はオナるわ、人前で濡れ濡れになるわ……」

 
 帝王様に握られている弱みが次から次へと出ることに慌て、ハル兄の口を塞ごうと反対の手を伸ばすと、その手も掴まれた。


 ハル兄はあたしの両手をぐいと掴み、浮力で軽くなっているあたしを隣から難なく移動させ、その両足の上に跨がらせた。


 ハル兄の瞳が熱く潤んでいるのは、温泉と酒のせいだ。

 
 そう思うのに、急に笑いを消して真剣にも思えるその目の強さから、目をそらすことが出来ない。


 ぱしゃりと音をたてて、ハル兄はあたしを見つめたまま、あたしの両手を自分の首の後ろに回した。
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