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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
 


 入ってきた仲居さんの声に動揺の声はない。さすがはプロだ。ドア越し嬌声を聞き、実際シワシワだらけのシーツと、色気満載のはだけた浴衣姿のハル兄を見て、なにをしていたのかわかっているだろうに。


 電話でのやりとりのように、夕食を何時にどこで食べるのか、声だけが穏やかなやりとりを見せる。

 この調子だ。情事の証拠に触れられても「セックス? なにそれ、おいしいの?」くらい他人事のように振る舞い、事務的に用事だけさっさとすませて、仲居さんを追い返すのだ!!


――ああ、隣の食堂で夕飯っていうのもいいなあ。どうしようか、部屋食……うーん。


 ありえない。

 我らが帝王は、優柔不断とはほど遠く、相手が誰でもハル兄の即断=帝王ルールとなるというのに。


 考慮の余地ない決断に、あたしは泣かされてきたというのに。


 帝王ルールと言えば、忘れもしないピアノ教室のコンクール。

 同じ地区にあるピアノ教室が合同で開催するコンクールで、区民センターの大きなコンサートホールを借りて、各教室から小学生の部、中学生の部、高校生の部と、各三名ずつ選出され、その腕を競い合うのだ。

 小学二年生のあたしがその代表に初めて選ばれた時、ハジメテのことだからハル兄に報告して、コンクールに招待した。

 そのコンクールで、一般席に座っていた金髪姿のハル兄は、壇上のピアノ席からもよく見えた。何度も目を擦っていたから、あたしの勇姿に感激してくれたのかと思っていたが、ハル兄の性癖を知った今思えば、コンクールのためにドレス姿で披露する幼女達に感激したのだろう。
 
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