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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
 


 夕飯までの時間、ハル兄はあたしを部屋の外に連れ出した。

 よれよれの浴衣をふたりとも着直して(着直す前にまた襲われそうになったが)、お揃いの紺色の羽織を着ている。ハル兄はあたしに背中を見せずに横にいて、やはりいつも通り、あたしと指を絡め合わせて歩いている。

 恋人同士みたいで無性に照れてしまうあたしが、せめて手を離そうとすると力を込められ、その馬鹿がつくほどの握力で手の骨が砕けそうになり、断念することにした。

 やはりここは、小動物シズルが、ハル兄に散歩"されてる"図と思おう。


 家族ぐるみでのつきあいが頻繁にあったから、今まで同じ旅館に家族同士で泊まり、風呂の帰りとか同じ旅館内でばったり会ったことはあったけれど、今は同じ部屋から同じところに連れ立ち、小さい頃にはしなかったようなことを何度もする大人の関係。

 12年前のあたしには、あの女の敵であるハル兄に最後まで激しく抱かれ、凄まじい快楽を刻まれるなど、夢にも思わなかった。

 ハル兄は身近のイケメンでありながら、あたしにとっては圏外であり、ハル兄の恋人になることだけは絶対忌避したいと思っていたくらいだ。無論女を食いまくっては捨てるハル兄も、その気はないだろうし。

 それが今や、昔のハル兄からは想像出来ない「何度もセックスした異性と静かに手を繋いで、横に並ぶ」ということをしてくれているおかげで、なんだか調子が狂ってしまう。

 たとえそれが幼なじみの気安さからであろうと、こうしてずっとハル兄と共に居るのが苦痛に思えないのは、12年の眠りの賜物なのだろうか。

 髪の色共々性格も賑やかで、とにかくどこからも誰からも目立っていた女の敵に怒った思い出ばかりしかなかった昔に比べて、12年後は切なくなるほどの穏やかさを感じる。

 ハル兄も大人になったんだなあと、しみじみ思う。
 
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