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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
セットのしていないハル兄のストレートな黒髪は、前髪が長めだ。それを手で掻き上げる仕草が妙に色っぽくて、心臓に悪い。寝ても覚めてもしたばかりだからなのか、ハル兄からはオスのフェロモンただ漏れで、別館にひとがいなくてよかった気がする。
ああ、ばたんと倒れそう。
「どうした?」
「なんでもない」
ハル兄の色気にやられそうなどと言った日には、もっと色気が出ることをされた上で、あたしがそれを望んだと末代までしつこく言われそう。
火照った顔を隠そうと横に背けると、名前を呼ばれたから、仕方がなくハル兄を見た。ここでシカトなどしてしまったものなら、どうなるかわからないこと、この愚民、長年の経験より身体で心得ております。
すると傾いたハル兄の顔が近づき、あたしの唇に重なり、さらりとした髪があたしの頬に掠める。
突如欲情したような、挑むような強い目が離れない。ドキドキを必死に堪えると、ハル兄はあたしの状態を深く追求せず少しだけ苦しげな表情をして、顔を離した。
「外に出るぞ」
だけどそれは一瞬で、熱の余韻が残る黒い瞳を優しく細めた。
別館の部屋に入るまでの渡り廊下みたいなところから、外に出られるらしい。草履がなれぬあたしだけ外靴にして、外に出る。
広がったのは、日本庭園のような趣のある中庭だった。
大きな鯉が泳ぐ池や、手入れのされた木々が、蒼天に反射したように眩しく目に映る。
「なかなか風情があるな」
眩しい中には、ハル兄の笑顔もあって目のやり場に困ってしまう。
この男、サバンナの申し子のためか、自然に返るととげとげしさやふてぶてしさが薄れて、ただのイケメン帝王様に戻るから厄介だ。
ハイスペックなこの男、たんぼを耕したりと田舎暮らしは想像出来ないのに、田舎の方がイケメン度あがるとは、これいかに?
「ハル兄から風情なんていう言葉が出るとは「ここで青姦するか?」」
「結構です」
……やはり自然の中でも、サバンナの帝王だ。