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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
あたしを愉快そうに笑ったハル兄は、いつの間にか拾っていたバスケットボールを、突如あたしの顔めがけて投げ寄越した。
「シズ!」
「え、なっ!!!???」
あたしの鼻が潰れる前に、あたしの手が動いて受け止めた。
12年眠っていても、あたしの心身は高校時代の体育の授業でやらかしてしまったことを覚えているらしい。
あの時は、鼻血が弧を描いて吹き出し、その血を見て気絶したのだ。
「ほら、寄越せ」
浴衣姿に草履のまま、ハル兄がゴール近くに走りながら上向きの指でちょいちょい動かして言うから、あたしは反射的に両手でハル兄に重いボールをパスした。
ダムダムダム!
ハル兄はボールを受けた左手で、そのままドリブルしながら、あたしを挑発する。ドリブルしているのは利き腕ではないくせに、ボールが左手に吸い付いているようだ。
ハル兄はドリブルをしながら、何かを考え無言だ。
こういう沈黙こそ嫌な予感を覚えるあたしに、ハル兄は言った。
「シズ勝負するぞ」
「やだ!」
ハル兄が好戦的になった時、あたしがいい思いをした記憶がまったくない。あたしはただ、ハル兄が満足するまで振り回されているだけだ。
学習能力がある愚民、ただちに拒絶。
「よし、だったら先に五回シュートが決まったら勝ちな!」
「やだってば!」
「お前は靴だが俺は草履だ。これはお前へのハンデとする」
「だからやだって!」
「負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞く。そうだな、可哀想だから1回にしてやろう」
拒絶なんてなんのその。我らが帝王は、いつものことながら、まるで聞く耳を持たずに話を進め、
「なんであたしが負けるの前提なの!? 勝つのはあたしよ!」
……そしてあたしは、いつものことながら、ハル兄の挑発に乗る。